北川浩の徒然考

私は2016年から成蹊大学の学長を務め、6年間の任期を無事に全うして2022年の3月に退任しました。本ブログは成蹊大学の公式な見解とはまったく無関係なものであり、あくまで社会科学を探求する一人の学者としての北川浩個人の考えを表示しています。

2023年展望(2)~歴史の転換点(歴史占い?)

年初にあたってやや科学的根拠に欠けるが歴史認識における周期説について触れておきたい。お正月なのでおみくじのような感覚でお読みいただければと思う。

■ 世代周期

 主に日本国内限定の歴史周期で、25年または30年を周期として時代の性質が変化するという考え方である。25年説でいうと、例えば1920~1945(狂乱混迷の時代)、1945~1970(成長発展の時代)、1970~1995(安定豊満の時代)、1995~2020(停滞閉塞の時代)といった感じである。時代を牽引する世代のようなものがあり、それが25年程度で入れ替わるということを主たる根拠としているようである。
 30年周期説では、日本は30年ごとに停滞混迷と成長繁栄を繰り返してきたという考え方で、1930~60(停滞混迷)、1960~90(成長繁栄)、1990~2020(停滞混迷)という感じである。こちらの方は世代特質の交替ではなく、むしろ社会のひずみ是正や技術革新などのサイクルがベースになっているように見受けられる。とちらのサイクルで考えても、2020年という年が節目の年に当たっており、2020年代以降新しい時代のフェーズに入ったというとらえ方になる。前者(20年周期)の考え方に立てば時代の特性は時間が経たなければ特定できないが、後者(30年周期)の考え方に立てば、これからの30年間は成長繁栄の時代ということになるだろうか。いずれにしても結果がでてみないとわからないという点では「占い」や「おみくじ」とそれほど大きくは違わないのかもしれない。 

■ 80年周期説

 こちらはもう少し世界的な規模のお話である。『100年予想』などでおなじみのアメリカの治世学者ジョージ・フリードマンなどが力説しているもので、80年に一度世界の秩序を変えるような歴史的な転換点が訪れるというものである。例えば1940年代(第二次大戦とその終結、植民地の独立、国連結成など)、1860年代(アメリ南北戦争、イタリア統一戦争、ドイツ統一戦争、明治維新など)、1780年代(アメリカ独立戦争、ヨーロッパ武装中立同盟結成、フランス革命天明の大飢饉など)、1700年代(グレートブリテン王国成立、赤穂浪士討ち入り、富士山噴火)、1620年代(アメリカへの入植開始(メイフラワー号)、三十年戦争、権利請願、)、1540年代(コペルニクス地動説発表、ヨーロッパ宗教改革)というような流れになる。かなり無理筋の年代もないわけではないが、基本的には社会の矛盾やひずみなどが蓄積した結果、80年に一度くらいのペースで社会システムがパラダイムシフトと呼べるような大変革を起こすという考え方である。この考え方に従うと2020年代がその変革年代にあたっており、奇しくも国連常任理事国核兵器で脅しながら他国を侵略するという事態に直面し、世界がこれまで80年かけて積み上げてきた国際秩序が崩れ去っていく年代となった。

■ 太陽黒点周期説 

 太陽活動は11年周期で強弱を繰り返すことはよく知られており、また数十年に一度大活性期を迎えるとされている。太陽活動と社会変革に何の関係があるのかとも思われるが、太陽活動の周期はすべての生物のバイオリズムを支配しており、人間に関しては太陽活動が活性化している時期は無意識のうちにテンションが高くなり、喜怒哀楽の発信が過剰になると考えられている。この無意識的なテンションの高まりが往々にして、社会変革につながるような戦争や革命などを引き起こすとする考え方である。ちなみに現在は太陽周期は第25周期にあたり、2022年以降太陽活動はかなり活発な状況になっているようである。

■ まとめに代えて 

 これまで科学的根拠を詰められないような歴史観をとりとめもなく述べてきたが、どの説においても2020年代はかなり大きな歴史の転換点にあたっているようなので、占いのようなものかもしれないが、一応いままでと同じようなことがずっと続いていくというような考え方を一度リセットし、新しい時代がどういうものになるのかについてそれぞれの立場で自分自身の問題として考えてみるのも良いのではないかと思う。

未来を造像するためにまずは自分自身を守りましょう。