北川浩の徒然考

私は2016年から成蹊大学の学長を務め、6年間の任期を無事に全うして2022年の3月に退任しました。本ブログは成蹊大学の公式な見解とはまったく無関係なものであり、あくまで社会科学を探求する一人の学者としての北川浩個人の考えを表示しています。

新型コロナは終わってはいない~第8波の爪痕から見えてくるもの

5月8日から新型コロナウイルス感染症は感染症法上の分類を季節性インフルエンザと同様の第5類に変更される。社会全体としてみれば極めて妥当な決定である。しかしその報道姿勢には多くの疑問を感じる。今回はこの点に関して、第8波の死者数と併せて掘り…

どうするプーチン ~出口はどこにある

ロシアのウクライナ侵攻から1年、プーチンもゼレンスキーもバイデンもそれぞれスピーチをおこなっている。泥沼化の様相を呈しているが出口はどこにあるのだろうか。私は軍事戦略の専門家ではないので、こまかい戦況の予想はできないが、今回はこの戦争の出口…

どうする日銀新総裁 ~進むも止まるもいばらの道

バレンタインデーに次期日銀総裁人事が公表され(先にリークあり)、24日には国会で新総裁としての所信が述べられた。戦後はじめて経済学者が総裁の地位につくことになった。あわせて副総裁の人事も公表された。このあたらしいメンバーで日本の金融政策はど…

2023年展望~少子化対策を考える

ここへきて突然岸田総理は「異次元の少子化対策」と言い出し、それに対するクロスカウンターのように小池都知事は「所得制限なしに18歳までの子供に月5000円給付」と言い出した。4月にはこども家庭庁も発足するが、岸田総理の方は具体的な中身はこれから検討…

2023年展望(3)~新型コロナ

昨今政府のなかで新型コロナの感染症種別を5類(季節性インフルエンザと同等)に引き下げようとする機運が急速に高まってきているようである。社会全体が新型コロナのリスクを受容する方向にあることを考えれば、新型コロナの種別変更は時のながれであろう…

2023年展望(2)~歴史の転換点(歴史占い?)

年初にあたってやや科学的根拠に欠けるが歴史認識における周期説について触れておきたい。お正月なのでおみくじのような感覚でお読みいただければと思う。

2023年を展望する(1)~政治、経済、社会展望

あけましておめでとうございます。新年を迎えるに際して今年の日本を展望してみたいと思います。とにかくものすごいスピードで変化している社会なので、「何が起きるか分からない」「何が起きてもおかしくない」状況が続いています。なるべく可能性の高い予…

為替介入はしたものの~亡国の政策の末路

■為替介入の効果 9月に1ドル145円を突破した際に第一弾の介入が行われ、一気に3~4円程度円高に振れることとなった。しかし約1か月足らずで再び145円を突破し、その勢いのまま150円をあっさり超えるような勢いで円安が加速した。それに対して10月21日の日本…

新型コロナ第7波襲来 ~それでも出口(5類移行)をめざして

1週間くらい前から異常なスピードで新型コロナ感染者が増加し始めた。明らかに第7波の襲来である。しかしそれでも今の日本の経済状況を考えれば、社会経済活動を止めるべきではないし、止めることへの社会的コンセンサスも得られないだろう。新型コロナウイ…

安倍晋三元首相の死を悼む

安倍元首相は小学校から大学までを成蹊学園で過ごし、1977年に成蹊大学法学部政治学科を卒業した。一人の卒業生の命が、理不尽な凶弾によって無残に摘み取られてしまったことに対して、深い悲しみと強い怒りを禁じえない。ここに、心から安倍晋三さんのご冥…

死亡者総数からみたオミクロン株のインパクト~2月の異常さ

以前にも書いたが、新型コロナウイルス感染症の影響をみるために、死亡者総数の動きをみることが最も総合的なインパクトを評価する方法である。今回はオミクロン株による第6波のピークにあたる本年2月の死亡者総数を眺めてみたい。結論から言うと、極めて深…

プーチンが核を使う可能性

ウクライナ情勢が渾沌としてくるなかで、両陣営共に戦争の終わらせ方が分からなくなってきている。最大の焦点はプーチンが核兵器を使うことがあるかどうかであろう。今回は人類の未来に重大な影響を及ぼすこの核兵器使用の可能性について掘り下げてみたい。

プーチンが核を使う可能性

ウクライナ情勢が渾沌としてくるなかで、両陣営共に戦争の終わらせ方が分からなくなってきている。最大の焦点はプーチンが核兵器を使うことがあるかどうかであろう。今回は人類の未来に重大な影響を及ぼすこの核兵器使用の可能性について掘り下げてみたい。

岐路に立つ日本経済 ~ インフレへの備えを

ロシアに対する経済制裁が短期的に解除される可能性は小さく、常軌を逸した日本銀行の政策とあいまって、日本経済にはスタグフレーションの赤信号が灯っている。国民は「自分自身を守るための行動」をとるべき時期にきている。今回はインフレ到来への「備え…

ロシアへの経済制裁で日本が浴びる返り血

深刻さを増してきたウクライナ戦争とロシアに対する経済制裁。日本にはどのような影響があるのだろうか。ロシアに対する制裁はよく「返り血を浴びる」と言われるが、今回はこの点について、経済の視点から掘り下げてみたい。

感染者数がなかなか減らないわけ ~検査数抑制の愚行

デルタ株の時の経験から第6波も減り始めれば早いだろうと思われていたにもかかわらず、減り始めてから1か月経ってもなかなか減らない。今回はその背後に潜む検査数の抑制という愚行に焦点を当ててみた。

世界のデータから見たワクチン追加接種の意味

世界各国のデータによってワクチン追加接種率と新型コロナの感染者数・死亡者数との関係を検証してみた。極めて限定的な実証なので解釈は慎重に行うべきものであるが、結果はかなり予想を超えるものになった。

2021年の死亡者数から見えてくるもの ~ 何が起きているのか

今回は少し私の本業に戻って社会統計的な感覚で書いてみたい。あらゆる社会科学の基礎を成すといわれる「人口動態統計」をながめることによって、2021年の新型コロナが人口動態(年間総死亡者数)に及ぼしたインパクトを考えてみることにする。もっとも人口…

第6波襲来(4) ~ハイリスク者対策に焦点を

現状政府のオミクロン対策は迷走しているように見える。どこに焦点を当てているのかまったく分からなくなっている。私はなるべく有効なオミクロン対策パッケージの提案を目指しているが、今回は最も焦点を当てるべきものの一つである「ハイリスク者」につい…

第6波襲来(3) ~ 「5類問題」を考える

現在SNSやネットのニュースコメントなどで、「新型コロナを2類から5類にせよ」という意見が飛び交い、ちょっとした論争になっている。岸田首相をはじめ多くの政治家は慎重な姿勢だが、小池都知事などは少しニュアンスを持たせた発言もみられる。学生か…

第6波襲来(2) ~何をすべきか

本格的な第6波の上昇フェーズに突入した。国や自治体のとるべき対策は何だろうか。今回はオミクロン株の状況を踏まえた有効な対策について考えてみた。

第6波襲来(1) ~オミクロン株の感染力

12月まで鎮静化していたが、ついに第6波に突入し始めた。これから第6波の特徴を順を追って考えながら、新型コロナ終息に向けたシナリオ(そんなものはないかもしれないが)を考えていきたい。今回第一弾として、オミクロン株の感染力に焦点を当ててみたい。

オミクロン株への対応を考える

11月29日、岸田首相はすべての外国人の日本への入国を30日午前零時以降停止すると発表した。これまでの総理には見られないような迅速で果敢な決断であるが、どのように評価すればよいだろうか。今回はオミクロン株をめぐる対応について掘り下げてみたい。

10万円給付の不可解さ ~米百俵の精神を思い出せ

今般打ち出された経済対策の中で、18歳以下の子供に一人10万円の現金給付が盛り込まれた。昨年の全国民一律給付の際にも私は反対意見を述べたが、今回はそれよりももっと意味が分からないものになっている。今回はこの問題を掘り下げてみたい。

CS(クライマックスシリーズ)は必要か ~スポーツ本道と興行収入の葛藤

今年の日本のプロ野球は、セリーグではヤクルトと阪神、パリーグはオリックスとロッテがそれぞれ最後まで熾烈な優勝争いを繰り広げ、各チームが死力を尽くして最後まで戦い抜き、両リーグとも前年最下位チームの優勝という形で決着した。コロナ禍の中にあっ…

(祝)眞鍋博士のノーベル物理学賞受賞に思うこと ~日本の科学行政への反省を込めて

2021年度のノーベル物理学賞はプリンストン大学上級研究員の眞鍋叔郎博士(90歳)が受賞した。たいへん嬉しいことであり心からお祝いしたい。しかし同時に博士の受賞は、日本における研究の状況に関して、私たちを叱咤するもののようにも思える。自戒と反省…

新型コロナ第6波はくるか ~ 世界のデータから考える

日本のマスコミは日本の状況だけを紹介することが多く、なかなか世界の感染状況を目にする機会がない。日本ではこの冬に第6波がくるのかどうかが取りざたされているが、今回は世界のデータを眺めることによって新型コロナの「波」について掘り下げて考えてみ…

医療崩壊から見えてくるもの ~何をなすべきか

最近になって政府は秋以降の行動制限緩和の方向性を示唆し始めた、選挙対策かもしれないが、緊急事態宣言の延長とセットで出てくるところは相変わらずのチグハグさである。かなり昔になるがかつて「医療と健康の経済学」を講義した経験があるので、昔を思い…

学校再開vs一斉休校を考える

デルタ株が猛威を振るう中で学校が2学期を迎えることへの懸念が拡大している。夏休みの延長や分散登校などの具体的な措置も散見され始めた。極めて難しい問題であるが今回はこの問題を掘り下げてみたい。

ワクチンは本当に切り札か?

現在政府の中に「ワクチンさえ普及すればコロナ禍は終わる」という楽観的な観測が蔓延しているように見える。しかしこれは現在進行していることを放置することと表裏の関係にある。ワクチンはやがて(数か月後には)国民全体の7割程度に普及すると思われる…